第38章

実は今日、江川新が九条遥を訪ねてきたのには理由があった。すべての出来事が自分の妹の仕業だと知って、妹の代わりに謝りに来たのだ。しかし、今の九条遥はそれが彼の妹の仕業だとは知らない。江川新の頭に突然、恐ろしい考えが浮かんだ。

もし九条遥が一生この件の真相を知らないままだったら?

今日、彼が真実を話せば、彼と九条遥の間に溝ができてしまう。これからの付き合いでもこの件を思い出すことになるだろう。

彼は九条遥との間に溝を作りたくなかった。認めたくはないが、確かに九条遥に対して特別な感情を持っていた。

大学の時からそうだった。ただ、あの頃の九条遥は二ノ宮涼介のことで頭がいっぱいで、彼にはチャン...

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